食肉の生食や加熱不十分での摂取による感染性胃腸炎の診断と治療

今日の勉強

最近、話題の感染性胃腸炎について「質疑応答」ページに質問と回答がありました。
まとめておきます。

最後は「肉の生食にはリスクが伴うことを理解し、肉は十分に加熱して食することが重要です。」と締めくくっております。

では、以下に今後の診療のためのまとめです。

まず、肉の種類に応じて汚染可能性のある病原体のリストです。

鶏肉

  • カンピロバクター
  • サルモネラ

牛肉

  • 無鉤条虫
  • アジア条虫
  • 住肉胞子虫
  • アジア条虫
  • 腸管出血性大腸菌
  • カンピロバクター
  • サルモネラ

豚肉

  • 有鉤条虫
  • 旋毛虫
  • アジア条虫
  • トキソプラズマ
  • サルモネラ
  • エルシニア

次にそれぞれの病原体別のまとめ。

(1)細菌
1.確定診断
選択培地で分離・同定、便検体からPCR法で菌種特異的遺伝子を検出する。
カンピロバクター(スキロー培地など)
サルモネラ(クロモアガーサルモネラなど)
腸管出血性大腸菌(クロモアガーSTECなど)
2.治療
(1)抗菌薬治療は必ずしも必須ではない
(2)重症の場合や下痢の期間や排菌期間の短縮目的
小児:ホスホマイシンやマクロライド系
成人:キノロン系やマクロライド系
(3)腸管出血性大腸菌感染症:ホスホマイシン、ノルフロキサンが推奨。
発症後3日以内の使用で重症化を防ぐことができる報告あり。
3.予後
(1)カンピロバクター:まれに回復数週間後にギラン・バレー症候群や反応性関節炎(ライター症候群)
(2)サルモネラ:回復数週間後で反応性関節炎発症することあり。
(3)腸管出血性大腸菌感染症:溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症を起こすことあり。

(2)寄生虫

無鉤条虫症:肛門周囲セロファンテープ法で虫卵観察。プラジカンテル内服で治療。 予後良好。
有鉤条虫症:肛門周囲セロファンテープ法で虫卵観察。プラジカンテル内服で治療。有鈎嚢虫症発症の場合、要手術
アジア条虫症:プラジカンテル内服で治療。下剤で虫体排泄で治療効果高まる。
住肉胞子虫症:糞便よりスポロシストあるいは特異的遺伝子検出。治療必要なく、予後良好。
旋毛虫症:血中抗体価測定。メベンダゾールやベンダゾール。しかし、筋肉内のシストには効果なし。
トキソプラズマ:国立感染症研究所のホームページ参照

寄生虫感染について見逃す可能性があると感じました。勉強になりました。