HBs抗原陰性化後に肝細胞癌を発症されたHBVキャリアの患者さん

日記

 

dr.gif千葉県木更津市 肝臓専門医 早坂章です。

日本肝臓学会誌 2011年3月号に、「HBs抗原陰性化後に肝細胞癌を発症されたHBVキャリアの患者さん」についての論文が掲載されていました。

「要旨」の最後にもありますが、正常肝の無症候性キャリアも含め、HBs抗原陰性後も肝細胞癌のできる可能性がありますので、定期的な通院のなかで、画像診断を含め、慎重に経過を診ていただきましょう。

以下が学会誌「肝臓」からの要旨です。


要旨: HBs抗原陰性化後に肝細胞癌を発症したHBVキャリア3症例を経験した.

1例目は73歳男性.濃厚な肝細胞癌の家族歴を有する.15年前HBs抗原陽性を指摘され,4年3カ月前HBs抗原低力価陽性.CT&肝動脈造影による肝細胞癌診断時にHBs抗原陰性.肝表面は平滑で非腫瘍部の組織はA1F0.

2例目は61歳男性.32歳より39歳までB型肝炎の増悪を繰り返し数年後HBe抗原セロコンバージョンし,ALTは正常を持続.1年1カ月前HBs抗原陰性,CTで肝内占拠性病変なし.右季肋部痛で発症し,CTと肝動脈造影にて肝細胞癌破裂と診断.

3例目は69歳男性.8年前にHBV関連肝硬変と診断.1年2カ月前の採血でHBs抗原陰性.MRIにて径1.5 cmの肝細胞癌をみとめた.3例とも肝細胞癌診断時の血液検査はHBV既往感染の所見で,2例は慢性肝炎と肝硬変の基礎疾患を有するも,他1例はほぼ正常肝の無症候性キャリアからの発癌例であった.

正常肝の無症候性キャリアも含め,HBs抗原陰性化後も肝細胞癌の出現例があることを念頭に置く必要がある.

日本肝臓学会誌2011年3月号 早坂章
日本肝臓学会誌2011年3月号