B型慢性肝炎の検査・診断ー「慢性肝炎・肝硬変の診療ガイド2011」
千葉県木更津市 肝臓専門医 はやさかクリニック院長 早坂章です。 前回の続きで、B型慢性肝炎の「検査・診断」です。
この章は6節に分かれています。
- はじめにB型肝炎の診断
- HBV活動性の評価
- 抗ウイルス療法とウイルスマーカー
- 遺伝子型()genotype)とウイルス変異
- その他の検査
です。
では、簡単に御紹介を。
1.はじめに
肝炎ウイルスマーカーは重要であるが、測定法の進歩で使い方もかわってきたことに注意を促しています。
2.B型肝炎の診断
B型肝炎の診断にはHBs抗原の測定が決めてとなるが、厳密な診断には、「一般用」(凝集法)ではなく、精密測定用検査が必要とはっきり書かれています。
また、「慢性肝炎」とは6か月以上の肝障害が続いた場合にいいますが、経過からみて明らかな場合は、1回のHBs抗原検査でB型慢性肝炎と診断してよいと書かれています。
更に、IgM-HBc抗体検査は急性肝炎の診断に使われるだけでなく、キャリアからの肝障害発生と急性肝炎の診断の区別に使われることが記されています。
3.HBV活動性の評価
活動性の評価は病気の時期(病期)や抗ウイルス療法の指標として非常に大切であること、
そのなかで、HBe抗原 HBe抗体 HBVDNA量の測定が大切であると書かれています。
多くの場合、HBe抗原はウイルス増殖のさかんな様子を反映し、HBe抗体陽性に「セロコンバージョン」すると、ウイルスの増殖は低下します。
以前はこのセロコンバージョンを「臨床的治癒」と呼んだ時期もありました。最近はむしろ、軽視されている感もありますが、やはり、B型肝炎ウイルスの活動性が弱まった状態の目安として重要と書かれています。
ただし、最近はよく知られているように、HBe抗体陽性でも、ウイルス量が十分に少なくならず、活動性の肝炎をおこしている患者さんがおります。そのような患者さんは残念ながら、予後がわるいので、現在では、
「HBe抗原陰性の慢性肝炎」と分類され、慎重に診療にあたっています。
HBVDNA量については
- 近年、高感度で定量域の広い検査が開発された
- そのため、臨床的有用性が向上している
- 具体的には病態の把握、予後の予測、抗ウイルス量の適応決定や治療効果判定に不可欠
- 実際、HBVDNA量の多いほど、予後が悪く、肝硬変になりやすく、癌もおきやすい
- 逆にhBVDNA量が4.0 log copies/mL未満だと肝炎は鎮静化し、癌も起きにくくなる
- 注意点としてHBVDNA量が7.0 log copies/mL以上は「高ウイルス量」とよばれ、抗ウイルス療法が効きにくい
- 4.0-7.0 log copies/mLは「中ウイルス量」と呼ばれる
- 4.0 log copies/mL未満は「低ウイルス量」と呼ばれる
- 肝炎の治療目標は「低ウイルス量」で安定させること
4.抗ウイルス療法とウイルスマーカー
核酸アナログ製剤治療の経過はHBVDNA量でモニターできるが、肝細胞内のcccDNAは核酸アナログ製剤で低下させがたい点が問題である。
一方、インターフェロンは免疫系に働く治療なので、治療中止後も効果が持続する点が特徴である。
最近は cccDNA量の変化も推測できる、HBコア関連抗原量が健康保険内で検査可能であり、患者さんの経過観察にあたり、重要な検査である。
核酸アナログ製剤服用時に、HBコア関連抗原が低い患者さんでは、高い方にくらべ、
- 耐性株出現率が低い
- 中止後の肝炎再燃が弱い
- 組織学的に進行しにくい
- 肝発癌率が低い
ことが報告されている。
5.遺伝子型(genotype)とウイルス変異
B型肝炎ウイルスは遺伝子的に9つのタイプに分けられ、「遺伝子型」、「ジェノタイプ」と呼ばれている。
日本では遺伝子型Cが遺伝子型Bに比べて多い。遺伝子型Aは、最近、海外から感染が入ったと考えられている。
遺伝子型CはBに比べて、予後が悪いことがわかっている。
また、最近は海外から持ち込まれた遺伝子型Aによる成人の急性肝炎が増えている。Aでは初感染でもキャリア化する率が高い。
「ウイルス変異」については、HBe抗原の合成が停止・減少するプレコアとプレコアプロモーターの変異も測定可能となっているので、HBe抗原のセロコンバージョン予測や、急性増悪時の重症化の予測などに重要、の書かれています。
6.その他の検査
肝生研などによる肝組織検査の重要性も述べられています。
- 肝線維化進行例では、肝発癌率が高いので、より頻回に肝癌のスクリーニング検査が必要
- 急性増悪に伴い肝不全をきたす可能性が高いので、インターフェロン治療よりも核酸アナログ製剤治療が推奨される
線維化に関係なく、B型慢性肝炎患者さんは肝細胞癌のハイリスクグループに入りますので、定期的なスクリーニングが必要です。
特に危険因子(起こりやすい特徴)として
- 高齢
- 男性
- 高ウイルス量
- 高度の線維化
- 飲酒
などがあげられています。
以上、御紹介です。
いずれ、私自身の言葉でまとめたいと思います。
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