B型慢性肝炎ー「慢性肝炎・肝硬変の診療ガイド2011」
はやさかクリニック 院長 肝臓専門医 早坂章です。
日本肝臓学会編の「慢性肝炎・肝硬変の診療ガイド2011」はウイルス性慢性肝炎・肝硬変の診療について簡潔にまとめられた本です。
目次は
第1章 B型慢性肝炎
第2章 C型慢性肝炎
第3章 肝硬変
という3章構成になっています。
今回は B型慢性肝炎の章を紹介させていただきます。
この章は更に
- B型慢性肝炎の概要
- 検査・診断
- 経過
- 治療
に分けられています。
始めの「B型慢性肝炎の概要」はB5見開き2ページにB型慢性肝炎についての要点が書かれています。以下、要点の要点です。
まず、B型慢性肝炎について順にどのような病態かを解説。
B型肝炎ウイルス感染症は次のような多彩な病態を示す。
- 急性肝炎
- 無症候性キャリア
- 慢性肝炎・肝硬変
- 肝発癌
- 潜伏感染・再活性化
このなかでB型慢性肝炎はB型肝炎ウイルスキャリア(持続感染者)に起こる病態である。
下記の病態と切り離しては考えられない。
- 無症候性キャリア
- 肝硬変
- 肝発癌
どのような病態かというと
B型慢性肝炎では、
- B型肝炎ウイルスの活動性が持続し、
- 宿主(キャリア患者さん)の免疫がB型肝炎ウイルスを排除しようする。
- 結果として、肝臓の炎症(肝炎)が引き起こされる。
「B型肝炎ウイルスとその感染」については
B型肝炎ウイルス
- ヘプドナウイルス科
- 約3200塩基長の不完全日本鎖環状DNAがゲノム
- 肝細胞に感染後、cccDNAの形で核内にプールされ
- B型肝炎ウイルス複製の起点となる
- 世界人口の1/3(22億人)が感染したことがある
- そのうち、3億5千万人がキャリア
- その75%が東南アジアと西太平洋地域に在住
- 日本は約130-150万人がキャリアと推定
- 感染経路は母児感染と幼少時の水平感染が主
- 日本では1986年から母児感染対策が始まり、この年以降に生まれた国民のキャリア率はきわめて低い
- 通常、成人の初感染は急性肝炎のみでキャリア化はまれであったが、最近、遺伝子型AのB型肝炎ウイルス感染による慢性化が問題化
「診断と病態の把握」
- HBs抗原検査で診断
- 家族歴が重要
- 自然経過の病期:免疫寛容期、免疫排除期、免疫監視期 をALT値、HBe抗原/HBe抗体、HBV DNA量、免疫状態などから把握する
「治療の対象と目標」
- 現在の治療ではB型肝炎ウイルスを完全に排除することは困難
- したがって、治療目標はB型肝炎ウイルスの低増殖状態を宿主の免疫監視または抗ウイルス薬により達成すること
- 具体的には血中HBVDNA量を HBe抗原陽性者では、5.0 log copies/mL未満
- HBe抗原陰性者では、4.0 log copies/mL未満
- 肝硬変では、 3.0 log copies/mL未満 とする
- B型肝炎ウイルスキャリアの約90%は自然経過でHBe 抗原から HBe抗体へのセロコンバージョン、HBVDNA量の低下、肝炎の鎮静化がおこり、非活動性キャリアとなる。この経過の場合は予後がよく、治療を必要としないことが多い
- 一方、肝炎の発症後もHBVDNA量が十分低下せず、肝炎が持続する場合には肝硬変への進行や肝細胞癌合併の危険性が高く、積極的な治療が必要
以上です。
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